頑張れるだけ頑張ろう、そういう思いでブログを書いております。最近は短編小説をメインに書いておりますので、お暇な方はぜひお立ち寄り下さい。


by ore1984
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僕小説その27 狩り 

「ヤマザキさん・・・。本当に僕らはこのまま、この任務を続けていていいのでしょうか」
 彼にとって、今与えられている任務はとても不満だった。合法的にしろ、人を殺さねばならないからだ。
「しかたないわよ。わたしたちだって食べていかなきゃならないし、それにほら、ノルマを達成しなきゃ減俸されちゃうし」
 彼女はあくまでポチティブに物事を考えている。自分達のやっていることは、あくまでも任務と割り切っているのだ。
「しかし・・・いや、でも命ですよ、命。命はお金で買えますか?買えませんよね。それを僕らは任務とはいえ、奪うことになるんです。いいんですかそれでも。・・・言いたくはありませんけど、ターゲットは僕らと『同じ』わけですし」
 彼の口ぶりには迷いがあった。どうも彼は自分の任務を割り切ってはいないらしい。
彼女はいつまでも迷い続けるパートナーに業を煮やし、いきおいよく迫った。
「ニシカワくん、わたしたちはなに?どういう存在。それなのに感情なんかで任務を左右されちゃたまんないわよ。いい、わたしたちに必要なのは、任務を遂行するための『意思』と生きるための『目的』よ。もしも、わたしたちがこの任務からはずされたら、復帰するまでどれだけ時間が掛かると思っているのよ!」溜息をついて「別にわたしたちじゃなくてもいいってこと、それだけは忘れないで」
「すみません・・・つい」
「まっ気持ちはわからないでもないわ。なにせ、同族を殺さなきゃならないんだからね」
 二人は僻地から閑静な住宅街へと移動した。
 現在は、人通りが少ない。彼らにとって、これ以上にない任務遂行日和と言えよう。二人はターゲットの住居から死角になるポイントに陣を敷いた。
「ターゲットのポイントは、この場所のええっと」
「西地区29、Y241、R125。それくらいおぼえていなさいな。もし、単独で任務を遂行する場合、それじゃ失敗しちゃうわよ」
「すみません。記憶力には自信があるのですけど、ついメモをとらなくて」
「メモは情報を客観的にするから、常に書く癖を見つけなさい。記憶なんてものは、時間とともに曖昧になって正確性にかけるんだから」
「でも、先輩たちはメモなんてとってませんよ」
「新人の分際で風体なんて気にしない。必要なのは、正確な情報を常に保持することなんだから・・・あっ外に出たわよ」
 若い男が幼い子供を肩車しながら家の扉を開けた。今、この瞬間狙われていることなど知らず、まるで警戒心がない。
 ターゲットを影から観察している二人は慎重に品定めを始めた。
「ターゲットの容姿確認。プロフィールデータ確認。対象は99.9998%の確率でターゲットであると確定できます」
「よっし、じゃ、とっと殺っちゃおう。後味残さずね」
「でも、子供がいますよ。遺伝子プログラムDを解除されない限り、子供は作れないはずなのに」
「どうせ、ターゲットを匿っている一般人かなんかの子供でしょう。ああいう輩が匿われている場合、親代わりになるケースはよくあることよ」
「でも、この場でターゲットを暗殺してしまったら、子供は」
「ニシカワくん!」
「すみません」
「まあいいわ、わたしがやるからしっかりサポートよろしく。あなたは子供の方を眠らせて、わたしはあわてふためくターゲットを撃つから」
「えっ眠らせる? どうやって・・・」
「遺伝子休止弾、基礎中の基礎よまったく」
「すみません」
 彼女は風を切るような素早い動作で、背中に背負っている黒塗りのバッグから小銃とライフルを取り出した。ライフルをパートナーである彼に渡し、自分は小銃に銃弾を詰めた。弾数は1発。はずすことは許されない。
「いいわね、タイミングが重要よ。あなたはライフルで子供を狙って、わたしは眠らせた隙にターゲットを狙うから」
「一ついいですか?」
「10秒以内に言って」
「どうしてヤマザキさんが銃で僕がライフルなんですか?」
「確率を上げるため、音を減らすため、私の場合撃ったことを周囲に知らせるため、以上。やるわよ」
「はい・・・」
 彼はライフルを地面に固定して、幼い子供にひょうじゅんを向ける。タイミングが大事だ。このタイミングをはずすと、当分の間、狙えなくなる。
「南無さん」
 引き金が引かれた。
 銃弾は子供のこめかみに当たり、すぐさま消滅する。
殺人を目的とする銃弾以外は、人体に影響を与えないよう配慮されている。
子供の異変に気づいた男は、動きを止め、肩から子供を下ろした。彼は慌てて、子供の名前であろう、何度も何度も呼びかけている。
「へーっ思ったより、いい腕じゃない。あらあらターゲットは大慌てね、私らに気づいたかしら!っと」
 彼女も引き金を引いた。銃は派手な音を上げて、銃弾を発射した。銃弾は正確にターゲットの心臓に吸い込まれた。
 ターゲットは白目を剥いて、膝から順にうつむけに倒れた。
「ミッションコンプリート。あとは情報部に任せましょう」
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「子供・・・子供がいました。彼には子供がいました。とても心配していました。それを僕は」
「感情に流されちゃだめよ。わたしたちは『生き残った残飯』なんだから、いちいち気にしたら死ぬわよ」
「でも!」
「何度も言うようだけど、私達は『廃棄された医療用クローン』なのよ。依頼人がいらないと言ったら、わたしたちはいらない存在なの。わかる? 昔、ニシカワくんとわたしは『ターゲット』のように施設から脱走して、彼と同じような道を選ぼうとしたわ。でも、それはできなかった。わかりきっていることね。彼のように何度、何度も投稿状を無視してきた結果こうなる。わたしたちは生きるために殺さなきゃならないのよ、それを忘れないで」
「僕らにだって個性はあります。オリジナルとは違う性格だって」
「文句言うなら法律相談所に言ってね。まあ、わたしたちには人権はないけどね」
 彼女は一息ついて、落ち込んで何も言えない彼の背中を押した。
「減俸されて、殺しの数を増やしたくないでしょ。だったら、殺しなさい。殺して、殺して、殺しまくるの。そして、1000人殺して、わたしたちは自由になる。ねっ。」
「はい・・・・・・」
「さて、人が来るからとっとずらかろう」
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# by ore1984 | 2005-11-28 18:30 | ボク小説 短編

僕小説 短編26 贖罪

 何故、日の光が一筋も入らないこんな薄暗いの部屋にいるのかわからない。さっきまで僕は、家族と共にいたはずだ。何故、こんなところにいるのだろう?記憶をさかのぼっていけばわかるだろうか。やらないよりはいい。何もない部屋で、一人佇んでいては息が詰まりそうだ。
 僕は昔、大きな事故で生身の身体を失った。その原因はハッキリ思いだせない。まあ、とりあえず、そういうことがあり、僕の身体は脳以外、機械で構成されている。学校では何の隔たりもなく、同世代の友人たちと遊んでいる。ちょっと不満だったのが、僕は機械の身体ゆえ、自然に大きくはならないということだ。定期メンテナンスで、年齢相応の肉体に再構成されるが、自然に大きくなれない不満を親に打ち明けては慰められていた。
 我が家は3人家族。ふよう家族はなし、祖父母とは離れて暮らしている。母は専業主婦で、父は外交系サラリーマン。父は一月に一度しか帰ってこない。よく母の愚痴を聞かされては閉口するけど、気持ちはわからないでもない。父は、浮気性で女遊びがひどく、家庭をほとんど顧みない人だ。事実、僕が事故で身体を生身の身体を失ったときも父はそばにいてくれなかったらしい。そのことに、母は憤りを募らせ、離婚がどうとかよくしゃべっていた。離婚したければすればいいのに、母は父とまだ別れてはいない。何がそうさせるのか、ちょっと知りたかったけど、子供心に我慢する。二人が別れてしまうのは別に構わないけど、最低限の養育費は渡してほしい。僕だって、人並みの人生を歩みたいからだ。
 ついさっきまでの記憶を思い返すと、数時間前、久しぶりに父さんが帰ってきた。僕は喜んで迎えにいったけれど、父はそっぽを向いて顔も合わせてもくれない。少し寂しかったけれど、きっと仕事で疲れているんだな、と自分を納得させて部屋に戻った。ダイニングルームが突然騒がしくなる。どうやら父と母が口論しているらしい。そこから漏れてくる言葉は、「機械がどうだとか」、「ロボットの父親になったつもりはないなど」等、僕の話題らしい。これはちょっとショックだ。僕はロボットになったつもりなどカケラもない。僕は心があるし、痛みも感じる。ロボットとは感情が何もない、人間の都合よく動くようプログラムされた人形のことだ。あまりよく知らないことだけど、サイボーグとロボットは公で区別されている。もし公衆面前でサイボーグをロボット扱いしたら、想い罪を着せられる可能性だってあるのだ。父は、そんな法律を無視するように、僕をロボットと罵ったのだ。しかも、僕に聞こえるような大声で。
 僕は父と母がいるダイニングルームへ行った。そこには、大泣きしている母と顔が引きつった顔の父がいた。父は僕を一瞥すると、鼻で笑ったようにこう言った。「お前は俺の息子なんかじゃない。お前は単なる機械だ、機械なんだよ。お前が母親と呼ぶ女が、子供の死を忘れられずに作ったただの人形だ」その言葉で、僕の中で何かが途切れた。
 そこで記憶がブラックアウトしている。もしかして、ここは刑務所で、僕は父さんを殺してしまったのかもしれない。そう考えれば、記憶が途切れているのも説明がつくし、この部屋にいる理由もわかる。可能性としては一番高いだろう。
 足跡が聞こえる。壁の響音から察するに、だれかがこちらに向ってきていることがわかった。どうやら、僕に様があるようだ。当然といえば当然だろうけど、僕の心はなにか冷めていた。こういうのを犯罪心理学ではなんというのだろう。ここにパソコンがあったならすぐさま検索して調べたい。
 僕から正面に据えられている鉄製のドアがノックされ、その後、地面と摩擦して鈍い音をたてながら開いた。やはりそこには制帽と征服を纏った警官がいた。僕の仮説はますます真実味を増したようだ。
 警官は、僕をジッと見据えて話しかけてきた。
「ご機嫌うるわしゅう、ミスター。今お時間はありますか?」
 突然慇懃な口調で僕にあいさつする警官。どうしてこんなバカ丁寧に僕に話しかけるのだろう。僕は犯罪者じゃないのか?それとも犯罪者にかける第一声は、丁寧な口調から始まるのだろうか?
「あ・・・ああ、大丈夫」
 もっと他のことを話したかったけれど、まず会話というのは相手に合わせることが肝心である。とりあえず相手の口調に合わせて様子を見ることにした。
「そうですか、それでは失礼して」警官は近くにあった簡易イスに腰掛けた。よくよく自分の様子を見ると、僕は豪華なベッドの上にいる。薄暗い部屋という印象はどうやら、この部屋の機能がそうさせているらしい。
「明かりを点けてもよろしいですか」
「あ・・・構いません」
「それでは失礼します」
 警官は近くにあったリモコンに手を伸ばして、そのボタンを押すと、今まで薄暗かった部屋がまぶしいほど明るくなる。僕の眼中にある偏向レンズがすぐさま明るさを調整し、目を慣らしてくれる。この部屋は、豪華の一言では言い表せないほど煌びやかなスイートルームだった。
どうやら僕は、罪人ではないらしい。では、何故こんなところにいるのだろう。疑問が疑問を呼び、ついに言葉として漏れてしまった。
「あのすいませんけど、どうして僕はこんなところにいるのですか?」
 警官の平静な顔が突然驚愕に変わる。相手の地雷原でも踏んでしまったかな?
「あのミスター。いえ、ミスター大臣。気は確かですか?意識はハッキリしていますか?」
 大臣?一体何を言っているんだこの警官は。僕はまだ12歳になったばかりの小学生だぞ。気でもふれちゃったのかな。
「意識はハッキリしてますよ。ただ何で僕は、こんな煌びやかな部屋に寝かされているのです。ちょっと事情を説明してもらいないでしょうか」
「ああーなんということだ。まさか記憶を抜き取られたとは」
 警官は自分の手を額に当てて、呻きながらつぶやいた。
 事情をさっぱりつかめない僕は、眼をパチクリさせながら彼の意味不明な動作をくいるように見つめた。
「えっーと、何かヘンなこといいました、僕」
「いえ、何も妙な事は言っていません。非はこちらにあります」
 警官は、手を額に当てながら首を振って、申し訳なさそうに僕を凝視する。
「今、あなたは自分をおいくつだと思われていますか?」
「年齢ですか、12歳です」
「あなたの年齢は正確には12歳ではありません。本年で57歳になられました」
「57歳!」
 そう言われて初めて気づいたが、僕の身体は以前とは比べ物にならないほど大きい。ところどころに皺が目立ち、筋肉もたるんでいる。鏡を覗き込めばさらにショッキングな事実を垣間見ることができるだろうが、そんな勇気は持てそうにない。
「簡単に説明いたしますと、あなたはこの国で義体部門を統括してらっしゃる大臣です。先日、義体の完全除去をもくろむテロリストに誘拐され、最近になってようやく救出されたのです」
「えっ誘拐?でも、僕にはそんな記憶はありません。僕はさっきまで、父さんと母さんと一緒にいたんです」
「記憶にないのは当然です。テロリスト達は、あなたの脳から記憶を取り出してしまったからです。見たところ今のあなたは、あなたになるきっかけがあった事件の前の記憶しか持ち合わせてはおりません」
「記憶が持っていかれたって・・・・・・ええ!?そんな技術聞いたことがない」
「それはそうでしょう。あなたが少年院で作りだした技術なのですからね。簡単にあなたの過去をお話しますと、あなたは12歳の時両親を殺害し、少年院に入りました。そこであなたは脳から記憶を抜き取り、別な媒体に移し変える技術を生み出しました。その功績で特別に罪は免除され、キャリアを重ね、現在に至るのです」
 人間の脳から記憶を生み出して別な媒体に移植する・・・?それじゃまるで・・・。
「僕がそんなことを・・・」
「はい。その技術により、義体化は更なる躍進を遂げ、今では電脳というデバイスさえ生み出しました。チップを脳の代わりに、頭に据えるという技術です。この技術が世間に広まり、世界には生身の人間はほとんどいなくなりました。あなたの記憶を奪った犯人たちは生身の人間たちで構成されるテロ組織で、現在全世界で指名手配されています」
「人間はほとんどいないの」
「何を言っているのです、人間はたくさんいますよ。人間ではないのはむしろ『あちら』の方です。生身の人間など、人間ではありません。人間はあなたのおかげで、新たな進化を遂げました。『やつら』はそんな新たな人類を害する害虫のような存在なのです」
「害虫・・・・・・」
「ミスター大臣。必ずや犯人を捕まえて、あなたの記憶を取り戻して見せます。心配はいりません。場合によっては、あなたの経験、人生経験などをプログラムで再構築し、移植されますから。では、これにて失礼致します。朗報をおまちください大臣」
「そう・・・頑張って・・・」
「人の世界に栄光を」
 警官はそう述べると、慇懃に会釈をし、部屋から出て行った。
 警官の説明からわかったことがある。僕はこの世界を父が言う、ロボットで埋め尽くしてしまったらしい。僕の記憶を奪った犯人達は、僕に対する復讐に、善意の感情を持っていた12歳の僕の記憶だけを残して、今の僕の悪行を突きつけた。その後の僕の行動を予想した上で。
 僕は大理石の壁に思いっきり頭をぶつけた。何度も何度も、痛みが感じられなくなるまでぶつけた。意識が朦朧としてくる。この状態で眠れば、永遠に眠れるかもしれない。しかし、ここで僕が死んだとしても本当に死は訪れるのだろうか?僕が生み出した技術は死人すら蘇生させるとしたら。・・・・・・僕の予想では、間違いなくその技術は存在する。ここまで徹底的に世界を変革させた僕だ、自分が世界の永遠の支配者になろうと考えないはずはない。
 僕は一時的な安らぎに身を任せた。目覚めた世界には地獄しか待っていないことを知りながら。何故か父に謝りながら・・・・・・。
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# by ore1984 | 2005-11-08 15:03 | ボク小説 短編
「もう検索しつくした。まだ探すの?」
「探しつくしたなんて、それは会社のホストコンピュータまででしょ。他社のデータも調べてよ」
「あのね、俺はこの会社の端末なの。なんで他社のデータまで提供しなければならないわけ。ライバル店の儲け話なんて一切したくないね」
「客の要望を最大限に答える。それがコンビニのキャッチコピーじゃないか。それともそれは嘘っぱち?大手が?酷い話だね、詐欺販売で訴えたくなる」
「何をいっても何も出やしない。訴えてもなにも補償されない。人の世の中世知辛いものだけど、電子頭脳である俺には関係ない話だね」
「関係大有りだよ。君はこの店の販売プロジェクターなんだから、客の望みに最大限答えるべきじゃない」
「それは、自社の製品を買ってくれる客の話だ。他社で製品を買おうという奴なんか客じゃなくて識別信号だ」
「単に君の店が品揃え悪いだけだろ。僕に突っかかても何も出やしない」
「文句があるなら本社に言ってくれ。俺はただ、ここにある商品の説明をする端末だ。人のために動く身体も無ければ、気持ちを奮い立たせる気力もない。時間という過程の中で豊饒されていく人間の人格とは根幹から違うのさ」
「何だか君に聞いた僕が悪かったと、自責の念に捕らわれるな、こりゃ。一体なんでコンビニのプロジェクターってこうもまあ性格悪いんだか」
「的確な返答、万人向けの性格、商品知識、ネットアクセス速度、全て俺を組み立てた科学者の成果だ。訴えたければそいつ訴えろ。人間って少しでも自分や大切なものをけなされると哀しいものなんだろ。俺には理解できない思考だけどね」
「そう。だから僕は、愛犬が望むものを手に入れたいと思い、君に他社の店の情報を教えてほしいと頼んだ。自分のためではなく、誰かのため。感情を理解してほしいとは僕も思わないけど、手に入れられるなら手に入れたい」
「会社の注意事項に引っかかるから教えられないものは教えられない。それに俺の客は人間だ、犬の為に労力を使いたくもない。メモリ残量だって限界があるんだ」
「無償なんて言葉を素晴らしいと言っている人間がほとんどいないこのご時世、機械もまた同じ道を歩む何てバカな真似はしないでほしいな」
「主人の利益だけ追求すれば自ずとこうなる。俺の場合、自社の利益が最重要事項。社会のルールを多少知っていれば分かる話しだろ。だからこそ俺があなたに勧めるドッグフードは自社が販売しているものになる」
「牛と豚の違いを数値でしかわからない機械が勧める食品なんて買いたくないな。生きているものは、自分の価値観を数値で解釈できないからいいんじゃない。ペットも生身だ、望むものは手に入れてやる」
「電脳化しているペットもいるご時世に生身とはね」
「愛するものは機械だろうと、人間だろうと、ペットだろうと、そこに格差はないさ。消極的な姿勢は身を滅ぼすよ」
「ならプロジェクターとして一言だけ言わせてくれ」
「何さ?」
「新商品コーラ2049来月12日、ついに登場。体験したことのない刺激が君を待つ。俺は俺の仕事をする、そこに何の疑念の余地はない」
「人間はプロになる為に時間を費やした。機械はプロの模倣はできるが感情はあらず。君の人格データが更新されてなかったらまた来るよ」
「ありがとうございました。またの御来店をお待ちしています」
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# by ore1984 | 2005-11-04 20:22 | ボク小説 短編
「一つだけ質問していいかな」
「何?遠慮なく言ってくれ。君と僕との仲じゃないか」
「じゃあ聞くけど、君には葛藤が存在するのか」
「ああ、チップ化・・・電脳とも言うけど、脳自体を機械に変えた僕に、葛藤が存在するのか聞きたいわけか」
「まあ、そうだね。出来ることなら聞きたい。今後の参考になるかもしれないし」
「そうだな、一言で言えば葛藤は存在しない。悩みとは似たような衝動に陥ることもあるけれど、一定時間経過すれば自動整理されて通常の思考に戻るし、仮に故障したとしてもバックアップがそれを補う。これらのことを考えた上で、今のところの結論は、葛藤は存在しないといえる」
「確かにそうだね。悩みや葛藤は、深層意識の領域であって、君にはそれが存在しないのだから」
「ケンカを売っているなら買うが、君の質問から算出するに、君の本当の質問は葛藤ではないようだね。電脳の予測がそういっているよ。よかったら君の本当の葛藤を詳しく聞かせてくれないか。客観的な立場になるモードに移行すれば、最適なアドバイスを与えられるかもしれない」
「恋ってわかる・・・?」
「恋?同種の生物に感情移入する性衝動のことだったかな」
「まあ、一般的な認識とは違うけど、それと似ているね。僕は別に、性衝動は起きないけど」
「君は誰かに恋をしたの」
「恋をしたっていえるのか分からないけど、その人に対し、特別な感情があるのは確かだ」
「特別な感情。子に対する愛情。親に対する尊敬心。異性に対する衝動。君は異性に対して何かしら感情が沸いているらしい。どうやったらその感情が制御できるかは、僕のデータには存在しない。現在までの累積データからの答えは、何かしらきっかけを得て、対象に近づくしかない」
「まさしく客観的な答えだね。主観がまるでない」溜息をついた「・・・僕の悩みというのは、その異性の対象がアンドロイドという点だ」
「アンドロイドでも性行為は可能だ。子孫は卵子バンクから選び、自分のDNAを挿入すればいい。君の悩みとはそんなことなの」
「・・・脳の電脳化が進むに連れて客観的に物事をはかる人間が増えた。揺らぎも何もなく、ただ答えだけを述べる。はたしてそれは人間なのか。人間の定義とは何なのか。どうして人は己の脳を捨て、電脳化を望むのか。電脳人と話しをしていると、永遠に物議を醸し出しそうな論議を再開したくなる」
「本題からずれないほうがいい。君はアンドロイドに恋をし、どうしたら成就するか僕に聞いているのだろう。僕はさっき答えを言った。それに対し、僕は君の返答を待っている。答えはなんだ?」
「君の言ったことは正論で、僕の悩みは無駄なんだろう。言わずともわかっている。答えはただ一つ、恋するアンドロイドを自分のものにし、卵子バンクから卵子を選び、子供を創って幸せになる。それでいいんだろう」
「言い方が気になるな。まるでそれじゃ、僕は君に対し、分かりきった答えを言っているようなものじゃないか」
「実際にそうだ。僕は君意外にも何人かの電脳人に同じ質問をした。そして帰ってくるのは全て同じ答え。何度も同じ答えをいえば、分かりきっているのは当然だよ」
「不可解なことをするね。わかりきっている答えを君は何故求め続ける。時間の無駄でもあるし、得るものはなにもない」
「そのとおり。答えを知っていて、同じことを聞くことはない。でも生身の脳を持っている人間はこうも考えてしまうんだ。最適な答えを電脳人は持っているのではないかとね」
「最適な答え?僕は客観かつ、理想的な答えを言ったはずだ」
「質問に対する回答と問題に対する答えは違う。君は前者、僕が求めているのは後者。その違いがわかるかい」
「意味不明だ。・・・少し、脳にノイズが生じた、少し待ってくれ」
「聞いてなくてもいいけど、ある話を思い出すね。一昔の人は、コンピュータに自分の未来の選択を任せていた。人々はその中で幸せを噛みしめていた、疑問すら感じずに。その中でたった一人の少年が自我に目覚め、人々を先導し、コンピュータを破壊した。そして、人々は自由を得て、人としての生を歩む様になった」
「・・・・・・」
「今の君はそのコンピュータが脳の中にあるね。絶対的な防護壁に守られた機械の脳。破壊する方法もなく、人ではない人を生み出す天使の皮を被った悪魔。人が人として存在理由を消失させ、回答を述べ、答えを与えない」
「・・・・・・初期化完了。ええっと、どういう話だったっけ?」
「恋愛相談だよ」
「そうだったね。それに対する僕の答えは・・・」
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# by ore1984 | 2005-10-24 17:01 | ボク小説 短編