「きゃああああああ」
イヴは跳ね起きた。
全身、汗だらけだった。
首筋を撫でてみた。なんともないようだが、やたら生々しい感触が残っている。
イヴはハッとして周りを見回した。
エカーリア特有のチガの木を骨組みにした円形の布のテント、全然祖母が整理をしない家財道具、無造作に置いて不衛生な食器、隣で不機嫌に目を覚ました祖母・・・・・。
「イヴ・・・・」
イヴの祖母であるレイナは腕組をして、とんとんと人差し指はリズミカルに肘を叩いていた。
「あ、はい・・・」
「夜中にさわぐんじゃないよ」
「ご、ごめんない」
「じゃ、とっとと寝ろ」
「は、はい」
祖母はそれだけいうとさっさと寝てしまった。
孫に対する心配とかないのかこの人は、とイヴは思ったが、女手一つでイヴを育てた祖母レイナの性格は、図太くサバサバしているので、ちょっとやそっとのことじゃ眉毛一つ動かない。
イヴはじっとテントの布の様子を眺めた。布はふかい青色に染まり、光は通っていない。
どうやらまだ夜らしい。さっきの映像は、全て夢のようだ。しかし、もう寝むることはできそうもない。
テントの布が赤みをまし、かすかな隙間から光を通すほどいい朝だった。
レイナは朝食の準備をしていた。
「しかしなんで夜中にあんな声出したんだい?」
レイナは、テントの中心の鍋をかき混ぜながら昨晩のイヴの騒ぎを質問した。となりでイヴは、足を休める格好をして座っていた。
「ちょっとへんな夢見ちゃって」
「どんな夢だい」
「実はね・・・」
イヴは夢の中で、霧だらけの竜神の森にいたこと、人間と一緒にいたこと、ミイラみたいな男に殺されかけたこと、こと細かくレイナに語った。
「そこで、その夢終わったんだ」
レイナは鍋をかき回す手を止め、何か妙に考え込んでしまった。
「おばあちゃん?」
レイナはハッとして、再び鍋をかき回した。
「あっ・・・なんだい?」
「どうしたの」
「なんでもない、なんでもないよ、気にすんなじゃない」
「うん、わかった・・・・」
何かあるのかな?イヴは考えたが、質問しない方がよいと思い、これ以上聞かなかった。
レイナは鍋の様子を確かめ、よし、とうなずくと「椀をよこしな」と言い、イヴはきれいに洗った椀を渡した。
「なんだい、このこぎれいな椀は。いつものやつでいいだろう」
「あんな虫湧いてるようなやつ、いやよ」
「贅沢な奴だね」
「私は衛生上の問題で言っているの」
「やれやれ、まったく今時の若いもんは」
「関係ないでしょ」
レイナは、しぶしぶきれいな椀にドロリと鍋の中身を注いだ。鍋の中身はやたら鼻につき、イヴは思わず鼻をふさいだ。
「臭さ!何これ、なんの毒草入れたのよ」
「毒草?馬鹿いっちゃいけないよ。今回スープの中に入れた薬草は、とても体にいいんだよ」
「でもちょっと臭すぎるよ」
「じゃあ、鼻つまんで食いな」
イヴは渋々椀の中身を一口すすった。
味はなんとか、でも匂いがな、と考えながら少しずつ食を進めた。レイナは隣でもくもく食べている。
なんとか一杯平らげると、「ごちそうさま」とイヴは言った。
「もう終わりかい?あんたは成長期なんだから一杯食べないとだめだよ。そうしないと」
「体の中の「石」が成長しないとでも言うの」
「違うよ、こっちが成長しないってことさ」
レイナはちょんちょんとイヴの胸を指で指した。
胸?イヴは、レイナの胸と自分の小さな胸を見た。そして、ハッとして顔を赤らめた。
「そりゃまだおばあちゃんと比べて小さいわよ。私まだ12歳なんだから」
「12だからといって栄養とんないとだめだねこりゃ」
「言ってなさいよ」
イヴはべーーと舌を出して、外に出ようと玄関に近づいた。
「ああそうだ、そうだ、イヴ、あんたに伝えることを忘れてたよ。」
「何がよ?」
イヴは不満気な表情でレイナ方を振り向いた。
「お前の「結婚」が決まったからな」
「ふーーん「結婚」が決まったのね、分かった」
ん、結婚?イヴはキョトンとして、ぼっ~と立ち尽くした。そして、少~しずつ我を取り戻していった。
「結婚!何それ、聞いてないわよ」
「聞いてるわけないだろ、今言ったんだから」
「でも、結婚ていうのはお互いを好き同士になったもので・・あもう・・てか」
「相当混乱してるね、まあ安心しな、正確には”今”結婚するんじゃないよ。数年後に結婚するというだけさ、まあ婚約ってやつ」
「意味わかんないつーーの」
イヴの頭はパニックになり、今にもレイナに飛びつきそうな勢いだった。
「落ち着きな、単にあんたが”竜神祭”の”巫女”に選ばれただけさ、詳しいことは当日わかるよ」
「竜神祭・・・・」
イヴは、パニックをやめ、ふと考えた。
確か竜神祭というのは、3幻竜の妻を選考する祭りで、12歳以上の男女が毎年必ず選出されるんだったよね。そして、選ばれた男女は永遠を共にするとかなんとか。別名は婚礼の祭りだっけ?
「そしてあんたの相手、”護衛”には、カイが選ばれたよ」
「カイが?・・・・」
イヴは跳ね起きた。
全身、汗だらけだった。
首筋を撫でてみた。なんともないようだが、やたら生々しい感触が残っている。
イヴはハッとして周りを見回した。
エカーリア特有のチガの木を骨組みにした円形の布のテント、全然祖母が整理をしない家財道具、無造作に置いて不衛生な食器、隣で不機嫌に目を覚ました祖母・・・・・。
「イヴ・・・・」
イヴの祖母であるレイナは腕組をして、とんとんと人差し指はリズミカルに肘を叩いていた。
「あ、はい・・・」
「夜中にさわぐんじゃないよ」
「ご、ごめんない」
「じゃ、とっとと寝ろ」
「は、はい」
祖母はそれだけいうとさっさと寝てしまった。
孫に対する心配とかないのかこの人は、とイヴは思ったが、女手一つでイヴを育てた祖母レイナの性格は、図太くサバサバしているので、ちょっとやそっとのことじゃ眉毛一つ動かない。
イヴはじっとテントの布の様子を眺めた。布はふかい青色に染まり、光は通っていない。
どうやらまだ夜らしい。さっきの映像は、全て夢のようだ。しかし、もう寝むることはできそうもない。
テントの布が赤みをまし、かすかな隙間から光を通すほどいい朝だった。
レイナは朝食の準備をしていた。
「しかしなんで夜中にあんな声出したんだい?」
レイナは、テントの中心の鍋をかき混ぜながら昨晩のイヴの騒ぎを質問した。となりでイヴは、足を休める格好をして座っていた。
「ちょっとへんな夢見ちゃって」
「どんな夢だい」
「実はね・・・」
イヴは夢の中で、霧だらけの竜神の森にいたこと、人間と一緒にいたこと、ミイラみたいな男に殺されかけたこと、こと細かくレイナに語った。
「そこで、その夢終わったんだ」
レイナは鍋をかき回す手を止め、何か妙に考え込んでしまった。
「おばあちゃん?」
レイナはハッとして、再び鍋をかき回した。
「あっ・・・なんだい?」
「どうしたの」
「なんでもない、なんでもないよ、気にすんなじゃない」
「うん、わかった・・・・」
何かあるのかな?イヴは考えたが、質問しない方がよいと思い、これ以上聞かなかった。
レイナは鍋の様子を確かめ、よし、とうなずくと「椀をよこしな」と言い、イヴはきれいに洗った椀を渡した。
「なんだい、このこぎれいな椀は。いつものやつでいいだろう」
「あんな虫湧いてるようなやつ、いやよ」
「贅沢な奴だね」
「私は衛生上の問題で言っているの」
「やれやれ、まったく今時の若いもんは」
「関係ないでしょ」
レイナは、しぶしぶきれいな椀にドロリと鍋の中身を注いだ。鍋の中身はやたら鼻につき、イヴは思わず鼻をふさいだ。
「臭さ!何これ、なんの毒草入れたのよ」
「毒草?馬鹿いっちゃいけないよ。今回スープの中に入れた薬草は、とても体にいいんだよ」
「でもちょっと臭すぎるよ」
「じゃあ、鼻つまんで食いな」
イヴは渋々椀の中身を一口すすった。
味はなんとか、でも匂いがな、と考えながら少しずつ食を進めた。レイナは隣でもくもく食べている。
なんとか一杯平らげると、「ごちそうさま」とイヴは言った。
「もう終わりかい?あんたは成長期なんだから一杯食べないとだめだよ。そうしないと」
「体の中の「石」が成長しないとでも言うの」
「違うよ、こっちが成長しないってことさ」
レイナはちょんちょんとイヴの胸を指で指した。
胸?イヴは、レイナの胸と自分の小さな胸を見た。そして、ハッとして顔を赤らめた。
「そりゃまだおばあちゃんと比べて小さいわよ。私まだ12歳なんだから」
「12だからといって栄養とんないとだめだねこりゃ」
「言ってなさいよ」
イヴはべーーと舌を出して、外に出ようと玄関に近づいた。
「ああそうだ、そうだ、イヴ、あんたに伝えることを忘れてたよ。」
「何がよ?」
イヴは不満気な表情でレイナ方を振り向いた。
「お前の「結婚」が決まったからな」
「ふーーん「結婚」が決まったのね、分かった」
ん、結婚?イヴはキョトンとして、ぼっ~と立ち尽くした。そして、少~しずつ我を取り戻していった。
「結婚!何それ、聞いてないわよ」
「聞いてるわけないだろ、今言ったんだから」
「でも、結婚ていうのはお互いを好き同士になったもので・・あもう・・てか」
「相当混乱してるね、まあ安心しな、正確には”今”結婚するんじゃないよ。数年後に結婚するというだけさ、まあ婚約ってやつ」
「意味わかんないつーーの」
イヴの頭はパニックになり、今にもレイナに飛びつきそうな勢いだった。
「落ち着きな、単にあんたが”竜神祭”の”巫女”に選ばれただけさ、詳しいことは当日わかるよ」
「竜神祭・・・・」
イヴは、パニックをやめ、ふと考えた。
確か竜神祭というのは、3幻竜の妻を選考する祭りで、12歳以上の男女が毎年必ず選出されるんだったよね。そして、選ばれた男女は永遠を共にするとかなんとか。別名は婚礼の祭りだっけ?
「そしてあんたの相手、”護衛”には、カイが選ばれたよ」
「カイが?・・・・」
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by ore1984
| 2004-07-26 12:34
| ボク小説 長編