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頑張れるだけ頑張ろう、そういう思いでブログを書いております。最近は短編小説をメインに書いておりますので、お暇な方はぜひお立ち寄り下さい。


by ore1984
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ボク小説その2 家族

「きゃああああああ」
 イヴは跳ね起きた。
 全身、汗だらけだった。
 首筋を撫でてみた。なんともないようだが、やたら生々しい感触が残っている。
 イヴはハッとして周りを見回した。
 エカーリア特有のチガの木を骨組みにした円形の布のテント、全然祖母が整理をしない家財道具、無造作に置いて不衛生な食器、隣で不機嫌に目を覚ました祖母・・・・・。
「イヴ・・・・」
 イヴの祖母であるレイナは腕組をして、とんとんと人差し指はリズミカルに肘を叩いていた。
「あ、はい・・・」
「夜中にさわぐんじゃないよ」
「ご、ごめんない」
「じゃ、とっとと寝ろ」
「は、はい」
 祖母はそれだけいうとさっさと寝てしまった。
 孫に対する心配とかないのかこの人は、とイヴは思ったが、女手一つでイヴを育てた祖母レイナの性格は、図太くサバサバしているので、ちょっとやそっとのことじゃ眉毛一つ動かない。
 イヴはじっとテントの布の様子を眺めた。布はふかい青色に染まり、光は通っていない。
 どうやらまだ夜らしい。さっきの映像は、全て夢のようだ。しかし、もう寝むることはできそうもない。

 テントの布が赤みをまし、かすかな隙間から光を通すほどいい朝だった。
 レイナは朝食の準備をしていた。
「しかしなんで夜中にあんな声出したんだい?」
 レイナは、テントの中心の鍋をかき混ぜながら昨晩のイヴの騒ぎを質問した。となりでイヴは、足を休める格好をして座っていた。
「ちょっとへんな夢見ちゃって」
「どんな夢だい」
「実はね・・・」
 イヴは夢の中で、霧だらけの竜神の森にいたこと、人間と一緒にいたこと、ミイラみたいな男に殺されかけたこと、こと細かくレイナに語った。
「そこで、その夢終わったんだ」
 レイナは鍋をかき回す手を止め、何か妙に考え込んでしまった。
「おばあちゃん?」
 レイナはハッとして、再び鍋をかき回した。
「あっ・・・なんだい?」
「どうしたの」
「なんでもない、なんでもないよ、気にすんなじゃない」
「うん、わかった・・・・」
 何かあるのかな?イヴは考えたが、質問しない方がよいと思い、これ以上聞かなかった。
 レイナは鍋の様子を確かめ、よし、とうなずくと「椀をよこしな」と言い、イヴはきれいに洗った椀を渡した。
「なんだい、このこぎれいな椀は。いつものやつでいいだろう」
「あんな虫湧いてるようなやつ、いやよ」
「贅沢な奴だね」
「私は衛生上の問題で言っているの」
「やれやれ、まったく今時の若いもんは」
「関係ないでしょ」
 レイナは、しぶしぶきれいな椀にドロリと鍋の中身を注いだ。鍋の中身はやたら鼻につき、イヴは思わず鼻をふさいだ。
「臭さ!何これ、なんの毒草入れたのよ」
「毒草?馬鹿いっちゃいけないよ。今回スープの中に入れた薬草は、とても体にいいんだよ」
「でもちょっと臭すぎるよ」
「じゃあ、鼻つまんで食いな」
 イヴは渋々椀の中身を一口すすった。
 味はなんとか、でも匂いがな、と考えながら少しずつ食を進めた。レイナは隣でもくもく食べている。
 なんとか一杯平らげると、「ごちそうさま」とイヴは言った。
「もう終わりかい?あんたは成長期なんだから一杯食べないとだめだよ。そうしないと」
「体の中の「石」が成長しないとでも言うの」
「違うよ、こっちが成長しないってことさ」
 レイナはちょんちょんとイヴの胸を指で指した。
 胸?イヴは、レイナの胸と自分の小さな胸を見た。そして、ハッとして顔を赤らめた。
「そりゃまだおばあちゃんと比べて小さいわよ。私まだ12歳なんだから」
「12だからといって栄養とんないとだめだねこりゃ」
「言ってなさいよ」
 イヴはべーーと舌を出して、外に出ようと玄関に近づいた。
「ああそうだ、そうだ、イヴ、あんたに伝えることを忘れてたよ。」
「何がよ?」
 イヴは不満気な表情でレイナ方を振り向いた。
「お前の「結婚」が決まったからな」
「ふーーん「結婚」が決まったのね、分かった」
ん、結婚?イヴはキョトンとして、ぼっ~と立ち尽くした。そして、少~しずつ我を取り戻していった。
「結婚!何それ、聞いてないわよ」
「聞いてるわけないだろ、今言ったんだから」
「でも、結婚ていうのはお互いを好き同士になったもので・・あもう・・てか」
「相当混乱してるね、まあ安心しな、正確には”今”結婚するんじゃないよ。数年後に結婚するというだけさ、まあ婚約ってやつ」
「意味わかんないつーーの」
 イヴの頭はパニックになり、今にもレイナに飛びつきそうな勢いだった。
「落ち着きな、単にあんたが”竜神祭”の”巫女”に選ばれただけさ、詳しいことは当日わかるよ」
「竜神祭・・・・」
 イヴは、パニックをやめ、ふと考えた。
 確か竜神祭というのは、3幻竜の妻を選考する祭りで、12歳以上の男女が毎年必ず選出されるんだったよね。そして、選ばれた男女は永遠を共にするとかなんとか。別名は婚礼の祭りだっけ?
「そしてあんたの相手、”護衛”には、カイが選ばれたよ」
「カイが?・・・・」 
 
# by ore1984 | 2004-07-26 12:34 | ボク小説 長編

自転車

 360度の風景のパノラマ、干したての布団のような心地よい風、背中を押すように感じる温度、ペダルを漕いでいる時に感じる心地よい重さ、これらは全て自転車に乗っているときに感じるものである。しかし、これらは、日によっては風景が醜悪な塊に見えたり足に鉛を置いているような重さを感じたりする日もある。逆に、風景を見て楽しむ余裕があったり綿のように足が軽い日もある。こんないろいろ思いが出来る自転車とは、僕にとって、学校へ行くための通勤道具の時もあり、自分のもう一つの足でもあり、他に代わりがないかけがえのない宝物であり、娯楽であり、心から楽しいものである。僕は自転車にはちょっとした思い入れがある。今から書く二つのことは、人から見ればささいなことかもしれない。もしくは、人によって似たような経験があるかもしれない。

 人は馬鹿にするかもしれないが、僕は、小学2年生の2学期になるまで補助輪なしで自転車に乗れなかったのである。何度も転び、痛い思いをして訓練しても、ちっとも自転車に乗れなかった。しかし、ある日のことだった。僕は乗れない自転車にまたがり、町中を転びながら自転車を漕いでいた。これはちょっとした荒療治だった。同年代で自転車に乗れないのは僕だけなのである。浅い考えだが、僕は、町中を走りまわれば、何かきっかけが手に入るのでは、と思い、必死に走った。しかしだめだった。結局一日中走り回ったが、どうしても乗れなかったのである。僕は半泣きだった。もしかしたら僕は、一生補助輪なしで自転車に乗れないのでは?そんな考えが脳裏をよぎった。ちょうどその時だった。僕から十数メートル離れた場所で交通事故があったのである。人々はすぐに現場に集まっていった。僕も行きたかった。7歳の好奇心は、事故にあった人には悪いが、抑えられるものではない。僕は思った。(すぐにでもそこに行きたい、事故見たい)僕の頭には事故のことしかなかったのである。無意識に僕は自転車にまたがり、現場に向かった。幸いにも事故は大したことはないようだった。その時僕はハッとした。(あれ?僕、自転車に乗ってなかったか?)なんと僕は、無意識に自転車を漕いでいたのである。そのときはまぐれだと思った、しかし、一度自転車を走らせると、スイスイ簡単に乗れるのである。正に、人の不幸が招いた幸運である。交通事故の人、ありがとう。と罰当たりなことを考えながら僕は自転車を漕いで家に帰ったのである。

 僕は中学生の頃、やたらに自転車で走り回っていた時期があった。僕は昔からオリジナルの話を作るのが好きで、体を動かしながらそれを考えるのがとても好きだった。自転車はまさにうってつけだった。自転車の心地よい振動を受けながら話を考えると、現実の風景は消え、心に映し出される風景は正に360度の映画館、まさに最高の娯楽だった。客観的に見れば、これは馬鹿な現実逃避かもしれない。しかし、この頃の僕にとって、常にオリジナルの話しを考え、自転車で走りつづけることは3度の飯より好きだったのである。

 この二つの話、補助輪なしで自転車に乗れるようになった経験、オリジナルの話を考えて走り続ける快感、これらが僕に、何か不思議な感覚を与えてくれた。しかし、これらの経験があったからこそ、僕は自転車に特別な思い入れをもてたのである。今は、物事を考えながら走ることは、あまりない。現実の風景を感じながら走り続けることの方が今では面白いからである。一人一人の人の行動、四季によって変わる木々、動くことによって常に変わり続ける風景、これらは僕に、芳しいような甘美な気分にさせてくれる。今僕は、19歳。これから10年、20年と時間は過ぎていっても、その年齢に応じた楽しみを感じながら自転車に乗っているだろう。
# by ore1984 | 2004-07-23 13:54 | ボク日記

ボク小説その1 夢

 イヴが今いる場所は真っ白い空間のようだ。
 いや、正確にいうのなら、濃霧に包まれた森の中だ。目を凝らして見ると、何とか樹木がうっすら顔を覗かせるが、ほとんど前を見ることはできない。なんとか見ようとするが、視点が固定されて全体を見ることはできない。
 不思議と音がない世界だった。
 生命の息吹も感じない。
「ねえ・・・・さん。ここが神竜の森なんだよね」
 イヴはふと奇妙に思った。自分意思に関係なく口が動き、だれかに話しかけているようだ。しかし、名前の部分が聞こえない。
「ああ、そうだよ。君が育った村の近くにある森だよ」
 すぐそばで声が聞こえる。しかし、視点が固定されているため、誰なのかわからない上、この声は聞き覚えがない。
 神竜の森?どうして私が禁断の森にいるの。ふと思ったが、答えが見つからないうちに勝手に口が動きだした。
 「そっか・・・私、ようやくここに帰ってきたんだ」
  イブは奇妙に思った。自分はエカーリアの隠れ里から外に出ることは許されないはずだ。エカーリアは、人間にとって、商売品のようなものなので、人間に接触しないように隠れ住んで一生を過ごすのが普通。そのため、隠れ里から出ることは、一生ありえない。
 けれど、この声はやたら感慨深い。久しぶりに返ってきた故郷という感じだ。
「そうだね・・・うれしい?」
「わかんない・・・もうここには誰もいないし」
 イヴと誰かは話を続けていた。
 誰もいない?どうして・・・村には100人以上の人が住んでいるはず。
 自分が会話しているはずなのに内容はまるで別人のようだった。
 その時、会話をしていた人物が、イヴの前を歩き出した。
 声から男性とは理解していたが、男の姿にはイヴは見覚えがなかった。
 男は、標準より多少大きな体格、見たこともない服装をしていた。黒髪で髪は長い。後ろ髪は一本にまとめているが、前髪はやたら不自然に立っている。顔は見ることはできなかった。そして、あきらかにエカーリアではない、人間だ。
「イヴは、自分の生を恨むかい?」
 男は後姿で、右腕を樹木にかざし、手のひらを樹木の表面つけた。
「・・・・うん、恨みたいと思ったことはある・・・でも」
 そのとき、自分の意思とは関係なく動く口から発せられた声は、トーンが低く、悲しみに溢れた声色だった。しかし、徐々に温かみがある声色に変わっていく。
「死んだ人は生き返らない。・・・・どんなに望んでも・・・だから私は、生きて生きて・・・お姉ちゃんの思い遂げて、みんなの「石」を取り返えして、全てを終わらせたい・・・」
 強い意志を感じた。この声には目的がある。しかし、何故・・・・死んだ人、姉?
「それでいいさ・・・・イヴはイヴの目的を果たせばいい。僕はブルーとシャオの敵をとるためにカレルを・・・」
「復讐するの?」
「ああ・・・それだけが僕の生きがいだから・・・・それだけが僕の生きてる理由だから・・・・それだけが・・・」
 男は、ギュッと手に力を入れた。徐々に彼の手のひらは、木の表面から内面に食い込んでいく。
 ふと、イヴの身体が前に動き出した。そして、男の背中に頭をつけた。
 自由に動かない体、声。しかし、嫌な気分にはならなかった。この男の影響なのだろうか?イヴは自虐的な人物は嫌いだが、この男は何か違うような気がした。
「あなたは一人じゃない。・・・・私がいる・・・トーラ達がいる・・・そう一人で考え込んじゃだめ」
「・・・・ああ、そうだね・・・ありがとう。・・・わかっている、わかっているはずなのにね・・・・」
 男はくるっと身体の向きを変え、イヴを見た。
 二人は向き合った形になった。
 とても優しい顔・・・。
 第一印象に感じたことはそれだった。
 年齢は18~20歳ぐらいだが、少年のようなあどけなさを感じる顔つきはとても優しかった。
 でも、悲しい目をしている。
 第二印象は感じたことは、哀愁だった。
 男の目は、生きることに執着をもっておらず、何か危なっかしい。
「さあ、行こうか、君の村に」
「うん」
 男は、少し微笑んだ。
「けど、まずそのまえに・・・・・」
 男の動きは突然止まった。そして、突然まわりの雰囲気が変わっていく。
 イヴの目の前にいた先ほどまでの優しげな男は、全身包帯でくるまれた男に代わった。その男は、さっきまでいた人とはまるで正反対だ。全身から殺気に満ちている。
 えっ?
 場所も違う。回りの森はの樹木は赤く染まり、足元が赤い水に満たされている。いや、これは赤い水ではなく、血・・・・。
「そのまえに、お前はここで死ぬがな」
 包帯の男は、右手でイヴの首を絞めた。徐々にイヴの身体は宙に上がっていく。
 あまりの苦しさにイヴは声にならならい悲鳴を上げた。

  
# by ore1984 | 2004-07-23 13:49 | ボク小説 長編

目標を立てること。

 ふと、目標とはなんだろう?そんな疑問が頭をよぎったことがある。昔の僕は、頭の中に目標の「も」の字もなかった。ただ一日一日暮らしていけばいい、そう思っていた。昔、漫画を読んでいて「目標も目的もないやつは生きる価値がないよ」とキャラクターが言っていた。生きる価値がない?そうなの?と頭によぎったものの、突然目標ができるわけがなく、ただ、漫画のたわごとだと思っていたのである。今の僕には、迷いつつではあるが、目標はある。しかし、このままでいいのだろうか?いつも思うのである。

 目標がなかった頃、僕は先が見えず、頭が空っぽで、ただただ時間に流されていた。小学生のころは、目標なんか考える暇もなかったし、中学生でも学校は不登校で、特殊学級に通い、TVゲームばかりやっていた。高校生になって、1年と2年生の時はその状態は続いていた。しかし、高校3年生のときだった。僕が通っていた高校は定時制なので、授業時間が短い。そのため、普通の高校は通学は3年だが、うちの高校は4年である。僕が3年生になった時、進路について悩んでいた。僕は元々4年通うつもりだったが、仲のよい友人たちが3年で卒業してしまうので僕も3年にするべきかずっと悩んでいたである。先生と相談して、やるだけのことはやってみようと、大検(大学検定試験)を受けることにしたのである。これで合格すれば3年生で卒業できる。しかし、大検は難しいと聞いているので、僕は、とりあえず参考書を買い、大検の勉強をしたのである。最初は、やりたくない、眠い、だるさばかり感じていた。しかし、大検に受からなくてはと、今の自分で、できるだけのことはやった。結果、一年に2回ある試験で、1回目は6教科中2教科受かり、2回目は3教科中3教科受かった。3教科受かれば卒業なのに、5教科も受かってしまったのである。大検合格後、何か奇妙な感覚が僕の中にあった。僕は考えた。(今までこんなことはなかった・・・これはなんだろう・・・何の感覚なんだろう)その時の僕には答えが出なかったのである。これが、目標を達成した時の余韻ということに気づいたのは、つい最近である。

 目標の力とはなんだろう?ある本で、こんな話が書いてあった。二人の男がまったく同じトレーニングで筋肉を鍛えた。一人は、ただ黙々と筋肉をきたえた。もう一人は、理想の自分の姿を想像しながらトレーニングをした。結果、二人ともまったく同じトレーニングしたが、理想の自分を想像しながらトレーニングした方が圧倒的に筋肉が付いたのである。これはどうゆうことなのだろうか?僕は、これが目標があったときの成長なのだと思った。目標があるとないとでは、成長の度合いがまるで違うのである。つまり、受験中のときの僕は、自覚はしていなかったが、目標があった。それが合格の要因ではないだろうか。

 今の僕には、小説家になりたいという目標がある。しかし、僕が通っている学校は、デザイナーの学校。去年は、目標が曖昧だったとはいえ、必死に基礎的なデザイナーの技術を身につけた。だから、2年目の今、こうして字の勉強ばかりするのは気が引けてしかたないのである。(僕はここで何しているんだろう?ここはデザイナーの学校だぞ。こんなことしてていいのか?)毎日思う。この文章を書いている今もその迷いは解けないのである。本当にこんなことしていていいのだろうか?確かに目標を達成した快感は最高だ。数ヶ月前僕は一つの目標を達成した。物語を書くという快感を。その時、大検合格後の奇妙な感覚の意味がわかったのである。だから、今のまま続けたいのである。全てを捧げ、残念な結果だったとしても、生まれて初めて全力を傾けたことだから、きっと何かしら僕に何かを与えてくれるような気がするから。

 人間は、生涯に一回必ず目標をもつ。世界一強くなりたい、野球が誰よりもうまくなりたい、足が速くなりたい。大半の人間は途中であきらめるか挫折する。生き残ったものたちが、格闘家、プロ野球、陸上選手など、目標だったものが職業になる。生きる中で挫折、苦悩、苦痛、様々な負の感情に襲われる。その中で、どう自分を保ち、目標を持ち続けるか。それが目標を持って生きるということである。
# by ore1984 | 2004-07-22 16:27 | ボク日記